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2019年03月04日 18時00分

『野球は究極の個人技』自分で考えてやることで上達スピードは格段に上がる!「プレイヤーズファーストを考える指導者交流会 対談レポート<後編>

2019年1月、「プレイヤーズファースト」を生み出す指導とは?vol.2 『選手の能力を最大限に出す方法』が開催された。このセミナーは「プレイヤーズファースト」を掲げる清水隆一さんとゲストによる対談で、「選手ありきの指導とは何か?」を参加者と考える指導者交流会だ。

今回ゲストとして登場したのは、清水さんの教え子で、横浜ベイスターズで活躍し、現在は中日ドラゴンズでコーチを務める波留敏夫さんだ。前編では清水さんの熊谷組での指導について、そして、選手たちはどのように感じながらプレーをしてきたのか、実体験を基に語られた。後編では、波留さんがプロに進み、練習への取り組み方や当時の監督について。さらに、コーチとして現在の中日ドラゴンズでどのような指導を行っているかが語られている。

“やらされている練習”と、“自ら進んで取り組む練習”では吸収するスピードが違うという。もちろん、後者の方が吸収スピードが速いということなのだが、自ら練習させるには何が重要なのか…。今回の対談ではプロ野球選手すらも陥りがちな悪例などが語られ、驚きの連続だった。

第3回の開催が3月に決定し、毎回違ったゲストと共に「プレイヤーズファースト」を軸に対談が進む同イベント。野球に関わる指導者の方はぜひ一度お越しいただきたい内容となっている。

清水)僕らのコーチングの世界では、チーム目標があり、これに向かって自分の立ち位置を理解できるかどうかはとても大事で、それを理解させた上で何をするのか自分で決めさせて進ませるのをサポートするのがコーチの役目ではないかなと思う。それがまさにプレイヤーズファースト。どうしても上から、負けているからやれと言われると嫌な気持ちになり、やらなくなるよね。

波留)嫌な気持ちで球場に来させるのではなく、『よし。やってやるぞ!』という気持ちにさせるのがコーチの役目ですね。あとは、選手が自主的にやってくれていい。そういう環境にしていきたい。自分達はそういう風に育ってきましたので。

清水)そういう風に育ってきたというのはプロに入ってから?

波留)プロに入ってからというより、清水さんが監督になってからですね。プロになった時の監督の権藤博さんと清水さんは考え方が似ているんです。何も言わずに、自分たちで考え打順も決めて良い。それ以外は自分が責任取るとまで言ってくれました。期待しているというのを肌で感じられましたね。

清水)心理学の先生に『個人を集団にして小さい塊で動かせるのが管理者として一番楽だが、だけども、このフィールドの中で1人1人がどんどん大きくなっていって、この中から出ないようにするのが監督冥利に尽きるぞ』と言われたが、波留さんはどう感じる?

波留)プロは戦力がないといけなくて、一般的であればよいかもしれないが、中日ドラゴンズに置き換えるとその考えは当てはめにくいですね。

清水)波留さんは、そういう心境を経験してきたが、そのような境地に達していないコーチもいると感じる?

波留)そうですね。感覚だけで教えている指導者が多いがそれは天才型であって、感覚で言われても分からない。本来であれば会話をしないとしっかり伝わらない。

清水)出来ちゃう人は出来ちゃうから出来ない人の気持ちが分からないので、なんで出来ないんだと怒るが、全員違うんだと思いながら観察していればこの人はこうだと観ていけるわけだ。

波留)観ながら話しながら。性格も考えながら伝え方を選手によって変えていくことが大事ですよね。

清水)自分が野球で一番成長したのはいつの時期だと思う?

波留)熊谷組ですかね。考えさせられる時間が多く、他の選手も上手かったので勝てる武器を作るにはどうするべきかというのを考え、自主練で組み立てていったのが一番成長したと思っています。

清水)プロに入ってからもオフシーズンに合同自主トレを行っているが、波留さんはどうしていたか?

波留)社会人の中に混じって行い、1月に身体を作り2月には技術練習だけ行うということをしていました。今の選手には、合同自主トレで追い込むのではなく、その前に追い込む習慣を身に付けてほしいと思いますね。

清水)そういえば、僕が監督に就任した1年目、熊谷組が5月くらいまで全敗していたのは覚えてる?あれはワザと仕掛けてたんだけど、気付いていた?(笑)

波留)全く気付かなかった。ワザとだったんですね。こんなんで勝つ気があるかと思っていました。(笑)

清水)あれは何をしたかというと、野球は『究極の個人技』で自分で何をすべきかということを考える風土を作りたかった。紅白戦の日程だけ伝えて、1月の自主トレを観察してた。コーチたちからはトップアスリートがこれでは足りないと、言いたがっていたけど、絶対に伝えさせなかった。何故かというと、今取り組んでいる結果が4~5月に出るから、ほっとけと伝えていた。そしたら、案の定4~5月で負けた。身体がきちんと出来ていないと負けるということを選手たちに実感してほしかったんだよね。

じゃあ、都市対抗までどうするかという所で、愛知の阿久比グラウンドにトレーニング合宿をしに行った。トップアスリートにはこのくらい体作りが必要だというのを実感してもらうために、野球の練習はせず走り込みだけをした。1週間で身体を作るのにどれだけの量のトレーニングをこなさなければならないか組み立てて行った。

それで成果が出なければクビだと思っていたけどね。(笑)

波留)計算通りでしたね。笑

清水)そう考えると、僕は熊谷組を自立集団にするのが夢で、それが社会人に寄付してくれるといいなと思っていた。 W-UPも自由だったよね。半袖短パンでもOKにしていた。練習時にユニフォームである必要はないなと思っていた。

波留)それはプロ野球でも取り入れています。

清水)あの時のルールは、野球の出来る格好だけすれば問題ないというルールだけ取り入れていた。短パンでもなんでもOKにしていたね。ちなみに、波留さんは上半身裸でランニングしていたら、OBに怒られていたね。(笑)

波留)覚えてます。(笑)その後、圧倒的に練習時間が短くなった。全体練習が2~3時間。

清水)熊谷組の試合前のW-UPは相手チームが来るまでの時間で自由にバッティングするだけ。ある時は、一人もやらなかった時もありましたね。選手たちはその日その日の課題や目標があるので、そこに標準を合わせて行っていた。紅白戦は自分の成果を披露する場で、オープン戦は課題をクリアできるかという位置づけだったので、最終的に成績をまとめて都市対抗に出る選手を決めていました。

1年間の最後は打てなかった選手(打率が悪い)選手は自動的にクビという形だったので、査定は不要で文句は言えない環境だった。そういう意味だと、プレイヤーズファーストで本人に考えさせて成績を残させるってきつかった?

波留)きつかったけどやりがいはありました。自分がやらなければ辞めていくしかないので、やるしかないという環境。自発的にやる・考えるという習慣が身に付きましたね。

清水)パンチ佐藤は亜細亜大学では変人扱いで外されていたが、熊谷組に来て生き返った。なにも言われないから、とにかく試合で結果を残せば良いというチームでやり方があったみたい。

波留)なるほど。指導者としては自分で球場に来て、楽しみに『これをやる!』という気持ちで球場に来てほしいなと。選手の意思を変えていきたい。

清水)今、小学生・中学生の野球人口が減っているが、指導者はどうアプローチしどう改善するのがいいと思う?

波留)これは難しいですよね。そもそもチームがほとんどなく減ってきている中で、野球をやる人がいないのと環境がないのが原因ではないかと。公園でも球技禁止になっているし、ボールに触れる環境がない。その中で中日ドラゴンズでは、学校の授業に行ったりして改善しようと努力はしています。

清水)要は、初めてやる小学生に野球は難しいが、楽しさを教えるには何をどう伝えるのがいいかな?

波留)まずは、ボールを投げる・打つという楽しさを伝える。結果はどうでも良くてやってもらうことが大事ですよね。

清水)少年団やシニアに行くと、プロに行かせるために指導者が教えまくっているのをよく見る。それは何とかならないものかな?

波留)それは、何とかしないといけないですね。今それを訴えているのは、周防くんではないですかね。少年野球に伝えつつプロの指導者にも伝えているんじゃないかなと。

清水)皆プロを目指す上で、ピラミッドの頂点がプロということだが、早稲田大学の非常勤で講義をした際に桑田真澄さん居て、桑田真澄さんが言うには、「逆台形理論と言って、皆野球から始まりデザイナーや経営者にもなれるので、どこに行っても良いと言う。ピラミッドの頂点ではなく、いろんな分野で活躍できる人材を育てる考え方なんだ」と。

波留)そういう考え方も良いですよね。高校の監督曰く、野球は通過点で社会に出てしっかりやらなければならないと言っていたのを覚えてます。

清水)勝つことが目的ではなくて、勝つことを目標に自分の立場をわきまえて、何をすることでチームの目標達成に繋がるのかということを考えられる人を育成していっているんだという事を、指導者が思わないといけないのではないかなと思いうよね。

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